ウィークデイ・ドライブ   1           −楽々探偵事務所−




いつもの広々として清潔に片付いた室内に、真夏の日差しが差し込んでいた。
京楽は眩しげにブラインドシャッターを少し下ろす。 応接用のソファーに戻ると向かいに座った男が、顎で示した。
「あれは何だ」
「ん?」
衝立の奥にあるキッチンが少し見える位置の、椅子に両足を上げてしまって 膝に頭をもたげて伏せる格好で浮竹がいた。
あーとかうーとか小さく唸っている。
「ああああ。浮竹です」
「知ってる」
京楽が振り返って浮竹に呼びかけた。
「まだ気持ち悪いの」
「…」
「だからよしなさいって言ったのに」
「すまん…今お茶を持って行く」
ふらりと立ち上がって奥へ入った。
「あいつはいつもああなのか?」
「いやなに。コーヒーを飲んだだけだから」
「?」
「浮竹はコーヒーが飲めないのに、 たまに僕に付き合って試みに飲んでみるのだけれど、そうすると ああしていつも気分を悪くする」
「変わってんな。馬鹿なのか」
「…。まあ日本人はわりに高い割り合いでコーヒーが体に合わないそうだよ」
男は聞いているのか否か、少し遠くを見ていた。
「香りは大好きなんだ」
浮竹が盆を持って戻ってきた。テーブルに二つ緑茶を出す。
男は顎に手をやってまだ何か考えていたらしいが、横目で
「そりゃ気の毒に」
と言った。スタークにしては気が利いていた。











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08052010




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