ほねつぎ (その十二) 首元までボタンの絞まった浅緑色の制服。 手を伸ばすと白い咽喉元が動いた。 ちょっと間を取って浮竹の長い髪を撫でてやる。 先のほうまで指で梳くと浮竹はくすぐったそうな顔をした。 診療を終了したほねつぎ医院は、ブラインドもカーテンも全て閉めてある。 今夜ここの明かりが外に漏れることはない。 あの夜と同じにひとつ、ふたつとボタンをはずす。 その度に浮竹は身じろいだ。 奥に一つだけある、浮竹の仮眠用のベッドに二人はいた。 面と向かってキスしようとすると反射的に浮竹は避けた。 「なに」 「あ、いや……」 「緊張してるの」 「い、いつも突然で無理やりだったから、優しいのはやりずらい」 「これが本当の僕」 京楽が浮竹の腕で脈を計ると早鐘を打っていた。 「本当に緊張しているんだね」 「う、うるさい」 触診するな、と言うと京楽は微笑んで、 「いいんだ。僕だってほら」 と言って自分の胸に浮竹の頭を抱え込んだ。 耳を胸に当てさせる。 京楽の体は熱かった。 胸はこんなに広かっただろうか。 自分の胸のあたりがぎゅっとして切ない。 思わず縋りそうになる。 京楽は浮竹の顎に両手を当て顔を上げさせて、キスを落とした。 いつもきっちり閉まっている浮竹の襟を開ける。 手を滑らせて中に触れると浮竹が怯んだ。京楽は宥めるように浮竹にキスをする。 浮竹が怯んで逃れようとするその度に何度も、何度も。 手を差し入れて胸を触る。浮竹がまた身を引く。 「初めて、触れる」 京楽が言うと浮竹はその声の低さに驚いて揺れた。 京楽は覆い被さって浮竹の両足の間に意図的に自分の足を滑り込ませた。 浮竹が明らかにうろたえる。京楽に呼応して熱を持ち始めていた。 「いいんだよ」 と京楽は言った。 「それでいいんだ。うれしい」 浮竹は耳まで赤く染めてぎゅっと目を瞑ってしまった。 硬直して動かないので京楽が笑う。が、京楽の導きに逆らう気もないらしい。 「怖いよ」 「うん。いいんだよ」 「自分が怖いよ」 「うん?」 「俺はお前の広い背中や、お前のその重さに安心する……」 なのに触れられるととても切ない。 「あ」 京楽は浮竹のささやかな喜びを聞き逃さない。 「は……」 柔らかな白い髪が流れ落ちていく。 続 0715.2011 |