保健室の人  4



相変わらず京楽は保健室によく顔を出していた。
ただ話したり、雑用を手伝ったり、仮病を使ってサボりに来たりしていた。
しかし浮竹は別段とがめる風もなかった。
時々本当に具合が悪くても、浮竹は二日酔いには薬は出してくれず、代わりに緑茶を入れた。


そんな京楽に浮竹が、
「君はまあ、保健室登校の部類だ」
と言った。



保健室に良く見る顔は、京楽のほかにもう二人いた。
保健委員長と副委員長の仙太郎と清音という生徒であった。
浮竹はこの二人を苗字でなく名前のほうで呼び、用事を頼んだり行事の相談などをしたりしている。
二人もこの新しい、性格も容姿もよい養護教諭に懐き、毎日ぎゃあぎゃあと騒がしかった。

おれの癒し時間が…
京楽はため息をついた。


「来年は保健委員、なろうかな」
京楽が言うと、浮竹は
「大変だぞ。人のゲロとか片付けたりするんだぞ」
と言った。
「先生って見かけの割りに口悪いよね」
「そうか?」
「そう。あと行儀も悪い。机に腰掛けていたり、ひどい時は足を乗せてたりね」
「そういやあお前は見かけと違って上品だな。行儀も悪くない」
「育ちがいいから」
「そうか。育ちがいいのか」
どちらともなく笑った。
京楽は最近心が穏やかだ、と思った。

笑った浮竹がコンコンと小さく咳をし、
「秋風になってきたな」
と言って窓を少し閉めた。

携帯の音。
浮竹の携帯だった。
浮竹はすまん、と言って席を立った。
時々浮竹は携帯電話でどこかと話しをしている。
「ああ、うん。分かっている…」
京楽は窓から、高くなってきた空を見ていた。
「俺には時間がないから」
そう聞こえた。
「何の話?」
と聞くと浮竹は
「まあ大人の話」
と言った。


その日の帰り道、京楽は浮竹に苗字でなく名前で呼ばれたい、 と思った自分のことについて考えていた。









09162009
アニメの浮竹たいちょう、床の間に腰掛けちゃっていましたね(笑)。


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