−楽々探偵事務所− 自分の指を舐めてごらん 耳に優しい声が響く。 視界はぼんやりとしていてよく見えない。 唇に指がふれる感覚。 指が唇を触る感覚…… ……っ――。 浮竹は瞬時混乱する。 自分ではないものの感覚。 確認しようとするが、意識が不鮮明で利かない。 朦朧とした中で、普段は絶対に触れない手が、自分に触れる。 ――浮竹、私をご覧 ――私を理解できるものなど誰もいない ――しかし、きみだけは違う ――私に触れて ――私を……って欲しい 急激に視界が歪み意識の戒めが解けてゆく。 ぼんやりとした視界の中で白衣の男が言ったのを見た。 ――この孤独から…… 目覚めると、涙を流していた。 感情が高ぶっていて、しばらく静かに一人で泣いた。 「救うことなど、出来ない…」 「起きたね」 京楽の声がする。 うっかりしていた、来客中だ。 ベッドを出た浮竹は、事務所のドアを開けてしまった。 「浮竹?」 「悪い夢でも見た?」 京楽がこちらをうかがう。 「少し」 京楽は重い感情を引きずってソファアへ近づき、京楽に身体を預けしなだれかかった。 呆気にとられた京楽の前に、スタークがいた。 「俺は今心が全開なんだ。許してくれ」 浮竹が言った。 「そうなんだ。悪いね」 京楽は楽しげに浮竹を引き寄せるとスタークへ付け足した。 end 04102015 |